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ペンタブレット事例集/御茶の水美術専門学校

テクニックだけでなく、考え方を学ぶ

「この箱根駅伝のポスターは『迫力』というイメージで作ることになったので、人間が走る迫力あるシーンを考えていきました……」

箱根駅伝

箱根駅伝ポスター

斉藤浩先生

斉藤浩先生

教室のプロジェクタには、下絵や作業途中の画像、できあがった作品が次々に写し出されていきます。
このコンピュータによる画像処理のスキルゼミ「画像効果」を担当するのは齋藤浩先生。先生はデザイナーでもあり、 最近作の六本木ヒルズにあるアカデミーヒルズの新聞広告でもアートディレクターとデザイナーそしてフォトグラファーとマルチに活躍されています。
この箱根駅伝ポスターも齋藤先生がかつて手がけた作品。「頭の中の世界を作る」という授業の課題に合わせ、 この作品を題材に企画から制作までのプロセスをていねいに解説しているのです。社会に出て役立つ実践的な内容ばかりです。

「デザインというと、この線を何色にするかといったことを決める仕事と思われがちですが、 実は『考え方』が重要な要素を占める仕事なんです。最初にクライアントから発注があって、どうしたらユーザをひきつけられるかを考え抜いて、最終的にアイデアや構図が決まってから実作業に入っていく。最後の何%しか、デザインの仕事だと思っていない人が多いので、 全体の仕事を学生たちに分かってほしいと思って授業をしています」と齋藤先生が語るように、先生のゼミは単にコンピュータ操作やテクニックを覚えるものではありません。
基本技術を身につけながら、デザインに対する考え方を学んでいきます。

粘土で自画像を制作中 1年ゼロワーク「彫塑・石膏」

粘土で自画像を制作中 1年ゼロワーク「彫塑・石膏」

CG製作において技術系と美術・デザイン系で異なる観点

御茶の水美術専門学校のコンピュータに対する考えも、齋藤先生の考えと同様にコンピュータ操作を教えることだけを重視するものではありません。
美術・デザイン系の専門学校の草分け的な存在であるこの学校は、基礎に力を入れているためコンピュータも油絵の具と同じ画材の一つとしてとらえられているのです。
ですからCG制作を学ぶとしても、コンピュータ専門学校などで学ぶCGと、この御茶の水美術専門学校で学ぶCGではちがいがあります。
「例えば『温泉に行こう!』というポスターを作ったとして、それを見た人が『露天風呂と湯気の合成がメチャメチャうまいなあ』と思ったら広告としては失敗なんです。見た瞬間に『温泉に行きたい』と思わせなければ意味がありません」
一時、ゲームソフトで『登場人物の髪の毛が1本ずつ揺れる』すごいソフトだと話題になったことがありました。
コンピュータが好きでそこからCG製作などに入っていく人が多くなり、技術先行に考えていくことに齋藤先生は疑問を持っています。 「何を伝えるか、どう伝えるかが重要なのであって、もしかしたらリアルなキャラクターよりアイコンのようなキャラクターの方が感情移入できて、 ゲームを楽しめる場合もあるわけですから。もともと美術・デザインが好きでコンピュータを使うようになった人は技術系の人とは別の観点を持っています。
ですから技術系の人が作るものと一緒にくくってCG作品としてしまうのは危険なのではないでしょうか」

手にある脳を活用させるタブレット

では、美術・デザインを志してきた学生にとって、コンピュータを画材としてとらえるのは容易なことなのでしょうか。

「美術専攻の学生はデッサンを描いてきていますから、手と紙と鉛筆というのが体に染みついています。自然に描ける訓練がされているわけです。
そこにマウスという道具が出てくると、頭の切り替えが必要となってきます。 でも、ペンタブレットを使ってペンで描くと切り替えの必要がなく、スムーズに描くことができます」

『コンピュータなんか興味ないよ』といっているアート系の人たちでさえ、 こんなに簡単で思い通りに描けてしまうのかと驚くほどだと言います。コンピュータを頭ではなく体でわかってもらうには、タブレットが有効だと齋藤先生は考えます。
「それは、マウスを使うとコンピュータが主導権を握ってしまうが、 ペンタブレットはペンを使う人間が主体となれる道具だから。手は昔から人間にとって描く役割を果たし、 ペンは人間がものを描くのに一番適した形なので、変にコンピュータを意識しなくてすむからではないでしょうか」
また、齋藤先生はペンタブレットを使うことは、アイデアを生むのにも役立つのではと言います。
デザイナーやアーティストは手にも脳があるというのが先生の持論です。
「頭の中にあるものをペンを握って白い紙にグルグル描いているうちにアイデアが出てきますが、マウスでカチカチとやっていても何も出てこない。それは理屈では説明できない人間の根底にあるDNAに根ざしたものなのかわかりませんが、理屈を超えたものなんです」
だからと言って、今の世の中ではマウスを拒否してコンピュータを使わないわけにはいきません。
画材としてコンピュータをより良く使うためにはどうしたらいいのだろうと考えると、ペンタブレットにいきつくのだとか。 紙と鉛筆で描く感覚に近く、アーティストが持つ手の脳を自然に働かせることができる道具なのです。

正確ではないものこそが、自然に見える

「実は僕、基本的にはコンピュータがきらいなんです」と笑う齋藤先生。
「なぜかと言えば、コンピュータで線を引くと、隣のおじさんが引いても、幼稚園児が引いても、イラストレーターが引いてもみんな同じになってしまう。
それはおかしなことだと思っているから。100人が線を引いたら、100本のちがう線ができるはずですよね。そこに個性やこだわりが出るはず。
コンピュータを使うようになって、見た目はきれいな線が引けるようになったけれど、本来、自然にあったものが失われてしまったような気がするんです。

それがコンピュータを使って作った作品にも表れると言うのです。 例えば、3Dで作られた画像を見て、何だか違和感を覚えることがあります。 実は人間の視覚というのは必ずしも正確ではなく、むしろ微妙に歪んで見えるため、コンピュータで作ると数値的には正しくても不自然に見えてしまうことがあります。 これと同じように、誰が引いても同じ太さで正確な線がかえって不自然に思えるのです。

しかし、誰が引いても同じに引けるはずのコンピュータの線も、ペンタブレットの筆圧機能を使うことで個性ある線を引くことができます。
厳密に言えばちがうのかもしれないけれど、コンピュータと人間を自然な形でつなぐという意味では、今の時点でベストな機器だと思います」

コンピュータを使い始めてから10年余りずっと、 コンピュータで描く不自然さを解消したいと考え続けてきた齋藤先生だからこそ納得できる言葉です。

[御茶の水美術専門学校]
「世界に文化で貢献する」という建学精神のもとに1955年に設立された美術・デザイン専門学校の草分け。 3年制で、入学時から半年間にいろいろな分野の美術やデザインを体験してから、自分の進みたい分野を選択して個性と創造力を磨き、 将来の進路を選択するという独自の「ZERO&FREE」というカリキュラムを実施。 美術・デザインの様々な分野を幅広く体験する「ゼロワーク」というカリキュラムに定評がある。

〒101-0062
東京都千代田区神田駿河台2-3
URL:http://www.ochabi.ac.jp/

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